レポート ゲーム理論 日本と中国、韓国、台湾関係について。
(1)日本産食品の輸入制限の継続が決定された根本的な原因
台湾での規制の継続の根本的な理由の一つには、
7年前の福島原発の事故があげられる。
福島や茨城、栃木に始まり、42都道府県には産地証明を義務付けるなどの規制がつけられた。
規制強化の背景には台湾での「食の安全問題」への高まりや、
表示偽装問題の規制強化に関心が高まっており、
日本政府の食に関する科学的根拠が乏しいという理由から、見直しを求めていた。
台湾内での放射性物質への不安は強く、
日本の食品の規制について住民投票で決めるに至った。
その結果、輸入制限賛成は、反対派の3倍以上の票を集め、
日本政府が求めていた輸入規制の見直し(緩和)は当面困難となってしまった。
日本国内での安全性に対する不安は減少してきていたため、残念である。
(2)輸入制限継続の原因が解決されないまま輸入制限措置だけが解除された場合,
台湾の日本産食品市場でどのようなことが生じるか。
このような場合、
台湾に輸出された日本産食品は購入されることはなく、また、
日本食を扱っている飲食店に代表される、
日本企業へのボイコットや嫌がらせなどで市民は訴えて来る可能性がある。
日本\台湾 |
未解決で買う |
未解決で買わない |
未解決で売る |
(+1,-2) |
(+1,-1) |
未解決で売らない |
(−2,0) |
(−1,0) |
台湾政府が未解決のまま輸入を決定すれば、日本政府にとっては「購入で+1」だが、台湾が未解決のまま買うを選べば、日本への不信で「−2」の影響が出る。
よって利得行列(未解決で売る、未解決で買う)=(−1、―2)となる。
次に未解決で売る場合には、購入してもらえるという点で「+1」だが、
結果、購入には繋がらないので、
台湾市民にとっては汚染された食品が出回ることになるので「−1」。
同様に考えると、日本政府が未解決で売らないを選ぶと購入者が減り、
購入意欲があるのに売らないという損を考えて「−2」。
一方台湾政府は購入をしないので「0」とする。
(未解決で売らない、未解決で買う)=(−1、0)
さらに、(未解決で売らない、未解決で買わない)場合(−1、0)とする。
以上の条件でゲームの均衡を考えると、
「(未解決で売らない、未解決で買わない)」という選択肢が
賢い行動となることがわかる。
(3)日本政府の取り組みが効果を発揮しない原因
まず第一に「風評被害」は国外だけでなく
「国内」でも起こったことを思い出して欲しい。
したがって我々日本人が「福島の食材を使って生活」して行くことが
信頼を取り戻す第一歩である。現地の人間が「食べるのを嫌厭する」
というのは国外の人にとっても同じく「不信感」の源になるからだ。
さらに、すでにメディアでの活動があった上で「効果がない」状況ではあるが、
より一層「情報開示」を強めるべきである。
どのような検証を行いどのような数値が出ているのか。
それらの細かい情報を解放することで「情報の非対称性」は無くなり、
信頼へつながると考える。
「革新的」なアイデアではないが「地道に活動を行って行く」ことが信頼回復への一歩に繋がる。
(4)中国・韓国・台湾の日本に対する不信感を説明
まず中国と日本の間では、福島第一原発以降に、「尖閣諸島問題」が存在する。
今現在では政府間での対応はひと段落ついているが、
両国ともにショックを与える事件となったため、
信頼回復への歯止めがかかったと考えられる。
同様に日韓関係では「賠償金問題」や「竹島問題」「慰安婦問題」
などが存在している上での福島の事故となったため不信感の回復が遅れたと考えられる。
台湾でも日本との関係で問題は発生しているが、
それよりも「地政学」的な影響が大きいと考える。
台湾は中国大陸が側近の地となっていてその影響力を無視することはできない。
これらのようなそもそもの政治的不信感、福島の事件が重なったことにより日本への不信感は募ることとなってしまったのではないだろうか。
個人的には関係が良くなることを望んでいるが、
早急な判断をしてしまうと「国内外への不信感や対立」につながりかねないので、
長期的な視点が必要になることは言わずもがなである。
以上。